人生100年時代を迎える中で、「長生きは本当に幸せか?」という問いは、避けて通れないテーマです。100年生活者研究所の調査によると、平均寿命は延びている反面、希望寿命はそれを下回り、「100歳まで生きたい」と答える人は約28%にとどまっています。そんな現状を変える試みとして注目されているのが「ゲーム」です。

「100年人生ゲーム」が問いかける幸せのかたち
これまでの人生ゲームは、ルーレットを回してマス目を進み、人生の様々なイベントを経て億万長者を目指す盤ゲームでしたが、今回タカラトミーと博報堂が共同開発した「100年人生ゲーム」は、「幸福度」を示すウェルビーイングポイントを集めることを目的としています。この背景には、「長くなる人生を前向きに生きるために、年齢を重ねても良いことは多いということを楽しみながら学んでほしい」という想いが込めらています。

デジタルゲームが「社会参加の入り口」に
近年、eスポーツやオンラインゲームを通じた新しい交流の場が注目され、若者だけでなく高齢者にとってもデジタルゲームは「社会的つながり」を深める手段となりつつあります。孤独や社会的孤立が心身の健康に悪影響を及ぼすことはよく知られていますが、ゲームはその課題を和らげる有効なツールとなる可能性があります。
千葉大学予防医学センターの中込敦士准教授らは、「Journal of Medical Internet Research」にて千葉県内の65歳以上2,504人を対象とした調査を発表しました。その結果、デジタルゲームを利用している高齢者は 趣味のグループに参加する割合や友人との交流頻度が高いことが示されました。
この研究は、ゲームが単なる娯楽にとどまらず、シニア世代にとって 新しい社会参加の入口や心の支え になり得ることを示唆しています。特に高齢期は、孤独感や認知機能低下がメンタルヘルスに直結しやすいため、ゲームを通じた「つながり」はウェルビーイングの観点からも大きな意義を持つといえるでしょう。

遊びがもたらす「生きる力」
年齢を重ねても幸せの源泉は多様であることを学べる「100年人生ゲーム」や、高齢者のデジタルゲーム活用が示すのは、遊びが社会参加のきっかけになり得るということ。アナログでもデジタルでも、ゲームは人生をシミュレーションし、自己理解や他者とのつながりを再発見させてくれます。
人生100年時代において、ゲームは幸福度を高め、精神的健康とウェルビーイングを支える新しい社会資源として、ますます注目されていくかもしれません。
参考文献
100年人生ゲーム プレスリリース(発表日:2024年11月7日)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000911.000008062.html (アクセス日:2025年8月22日)
100年生活者研究所:人生100年時代。わたしたちの人生は、“より長く”なっていくが、同時に、“よりよく”なっていくのだろうか。(発表日:2023年3月21日)
https://hakuhodo-rdc.com/100years_lab/posts/100_230320_02/ (アクセス日:2025年8月22日)
報道発表:ビデオゲームとウェルビーイングの因果関係が明らかに ~日本の自然実験が示すゲーム習慣のポジティブな効果~(発表日:2024年8月27日)
https://www.hama-med.ac.jp/mt_files/a64cc6422253b276fe6bfd2e3c737484.pdf (アクセス日:2025年8月22日)
Journal of Medical Internet Research:Digital Gaming and Subsequent Health and Well-Being Among Older Adults: Longitudinal Outcome-Wide Analysis. (発表日:2025年1月27日)