人生100年時代と言われる現代、私たちの暮らしの中では次々と新たな技術や価値観が生まれています。その中でも、急速に進化を遂げているのがAIです。AIは私たちの仕事や生活にどのような影響を与えるのか、そして私たちを幸せにする存在となり得るのか。今回は100年生活研究所のホームページに掲載された「定点レポート2025②AIと幸福篇」をもとに、考えていきたいと思います。
生成AI、日本での「よく使う」は10人に1人
まず、AIと幸福の関係を考えるにあたって、「日本におけるAIの利用状況」から見ていきます。

日本において、生成AIを「ほぼ毎日使う」または「よく使う」と答えた人の割合は、全体の約1割にとどまっています。さらに、約6割の人は生成AIを「まったく使わない」と回答しています。この結果から、2025年時点で他国と比較した場合、「日本の生成AIの利用率は著しく低く大きな差がある」ということが分かります。
AIを「よく使う人」は幸福度が高い? 調査結果が示す傾向
続いて、幸せとAIの関係について見ていきましょう。

上記のグラフで分かるように、AIを頻繁に利用する人ほど幸福度が高い傾向が見られました。この背景には、AIの活用によって生活や仕事の利便性が向上し、自己効力感や満足感が高まっている可能性が考えられます。一方で、もともと新しい技術や変化に対して前向きな姿勢を持つ人がAIを積極的に利用し、その結果として幸福度も高いという可能性も否定できません。AIの利用と幸福度の具体的な因果関係については、さらなる詳細な分析が必要だと言えるでしょう。
AI利用状況とAIへの評価・認識
下記のグラフは、AIが自分の幸せに「良い影響を与える」と考える人と「悪い影響を与える」と考える人とでは、AIに対する認識はどのような違いが見られるのか、その点を比較した調査結果です。

この結果から、AIが自分の幸せに「良い影響を与える」と考えている人々は、生活の質の向上や業務の効率化など、AIによる前向きな変化に期待を寄せていることが分かります。一方で、「悪い影響を与える」と感じている人々は、仕事への悪影響や、AIの急速な進化、人間の判断への過度な介入といった側面に対して、不安や恐れを抱いていることが明らかとなっています。
AIが幸せに与える影響の認識別・AI使用用途の比較
最後に、AIが自分の幸せに『良い影響を与える』と考える人と『悪い影響を与える』と考える人とでは、AIの具体的な使用用途にどのような違いが見られるのか、という調査です。

AIの具体的な使用用途を見ると、仕事での利用においては両者の間に大きな差は見られませんでした。しかし、プライベートでのAI活用状況に目を向けると「良い影響を与える」と考える人の方が、「悪い影響を与える」と考える人よりも明らかに積極的にAIを利用していました。
バランスの取れた関わりが、AIとの幸福な未来を築く
このように、日本ではAI利用率が低く、AIの進化に対する懸念の声も存在しています。しかし積極的にAIを活用する人々が、幸福度が高い傾向にあるのも事実です。現代では、「自分の幸せのためにAIを使う」ことも幸せに近づくための選択肢の一つです。AIを活用することで、自分の強みを伸ばし、新しい活躍の場を見つけることもできるかもしれません。実際に、専門的な知識や熟練者の考え方や行動をAIに取り入れ、それを他の人が使えるようにしたり、コミュニティづくりを支援したりするAIもすでに登場しています。
AIと共に自分らしい幸せを追求するためには、AIの可能性を最大限に引き出すための積極的な活用と同時に、AI技術への理解を深め、潜在的なリスクや倫理的な課題に対しても、社会全体で向き合っていく姿勢が不可欠です。そうした、バランスの取れた関わり方こそが、AIが真に人々の幸福に貢献する未来を築く鍵となるのではないでしょうか。
参考文献
100年生活研究所:定点レポート2025②AIと幸福篇「AIは人を幸せにするのだろうか?」(発表日:2025年3月19日)
https://hakuhodo-rdc.com/100years_lab/posts/100report_250319_2/
(アクセス日:2025年6月5日)